私は月間約200本の記事を編集しているため、作業の効率化のためにも、文章の「校正ツール」を使用しています。
ここ数年ほど使っているのが、「文賢」と「ATOKクラウドチェッカー」です。
校正ツールとしては「文賢」が有名かも知れませんが、価格帯から「ATOKクラウドチェッカー」を検討する人もいるはずです。
今回は数年間両ツールを使い続けてきた結果、どちらのツールがおすすめかを紹介します。
記事編集の校正ツールとして使用
まず前提条件ですが、私が使うのは「校正ツール」としてです。これは、外注で作成した文章をチェックするために使うということで、1から自分で文章を作る時に使うケースではありません。
校正目的ですので、主には誤字脱字のチェックや、誤用チェック、読みやすくない文章かどうかのチェックなどが主です。
今回の記事は「校正ツール」用としての比較となりますため、1から自分で文章を作るときに使う目的の人には少し違うかも知れません。
ただ、完成した文章の内容をチェックするという目的のためであれば、この記事の内容は当てはまると考えられます。
どちらかだけを使うならATOKクラウドチェッカー
まず結論からまず述べてしまうと、どちらかだけを選ぶとしたら「ATOKクラウドチェッカー」をおすすめします。
詳細はこれから述べますが、文賢はどちらかと言えば、ユーザー辞書など、機能を使いこなせて役に立つ場面が多いのに対して、ATOKクラウドチェッカーのほうが機能はシンプルですが、単純な校正チェックだけに限れば質は上だと考えるからです。
ただ、私は結局「文賢」でメインの校正チェックを行なった後、仕上げとして「ATOKクラウドチェッカー」を使うようにしています。このように、余裕があれば両方使うこともありでしょう。
まずは簡単に両ツールの機能を確認してみます。ここでは両ツールの詳しい説明は省きますので、気になる方は公式ページでご確認ください。
ATOKクラウドチェッカーの機能は?
ATOKの校正機能はシンプルに4つです。「誤りだけチェック」「ビジネスチェック」「公用文チェック」「表記ゆれチェック」です。
このうち、「公用文チェック」は公用文用にチェックをしてくれる機能のため、普通の文章ではまず使用しない機能となるはずです。そのため、使うのはそれ以外の3つです。
「誤りだけチェック」は、文章の誤字脱字や送り仮名間違いなどの誤用をチェックしてくれます。思い込みで慣用句を使っていたら実は間違っていた、などと言う場合もこの機能でチェック出来る場合があります。他にも和暦と西暦の年が間違っていたり、機種依存文字などもチェックが可能です。
「ビジネスチェック」は、ビジネス文としておかしいと思われる表現をチェックしてくれます。くだけた表現や、敬語の使用間違い、ら抜き、二重否定などです。ブログなどの文章の場合は、わざとビジネス文とは違う軽い書き方の場合もあるため、必ずしもチェックが必要で無い場合もあります。
「表記のゆれチェックは」、ある所では「できる」とひらがなで書いているのに、ある所では「出来る」と漢字で書いている、といった、同じ表現なのに違う表記となっているものをチェック出来る機能です。
文賢の機能は?
文賢の機能はATOKクラウドチェッカーより豊富ですが、大きなメニューでは、「文章表現」「校閲支援」「推敲支援」「アドバイス」の4つです。
「文章表現」は、特定の単語に関して、別の言い方を提案してくれる機能です。ただ、自分で他の表現を探すときに使うのは良いかもしれませんが、校正としてはほぼ使用することはありません。
「校閲支援」はATOKクラウドチェッカーの「誤りだけチェック」に似た機能で、文章の誤字脱字や誤用などをチェックしてくれます。
「推敲支援」は、同じ語尾の使い回しや、読みづらい文章、ひらがなで書く方が言い表現など、文章の推敲に役立つチェックをしてくれます。ATOKクラウドチェッカーの機能では、「ビジネスチェック」が似ていると言えますが、「推敲支援」の方がより多くの項目をチェックをしてくれます。但し、あくまで「推敲」の支援であるため、「こうしたらどうですか」というような提案レベルであり、この機能で文章のチェックが完結するというわけではありません。
「アドバイス」は、文章を公開する前のチェックリストが表示されます。何も設定をしなければ、「公に発信する際に注意すべきチェックリスト」「わかりやすさのチェックリスト」がそれぞれ10個ずつ表示され、文章を公開する前に自らチェックが出来るという機能となります。最終確認に毎回行なうルールがある時などは利用できますが、この機能だけで校正が出来るわけでは無いため、使用しない場合も多いでしょう。
文賢はこれ以外に「ユーザー辞書」機能があることが、ATOKクラウドチェッカーとの大きな違いと言えるでしょう。これは自分なりの文章のルールを登録しておき、チェック時に使えるという機能です。
例えば「推敲支援」用の辞書では、ひらがなで書く方が良い、カタカナで書く方が良い語などが初期で登録されています。新しく登録する場合の例としては、いつも決まったルールで文章を書くために、「できる」という文字はいつも漢字の「出来る」と書かずに、ひらがなで「できる」と書く、といったルールを決めている場合に、そのルールを登録してチェック出来る、といったものです。
文賢を使いこなすかどうかは、このユーザー辞書を使いこなすかどうかにかかっている部分もあるでしょう。ただ私はこのユーザー辞書を昔は使っていた時期もありましたが、現在は使っていないため、今回の記事では使っていない前提での話とはなります。
その他、文章の「音声読み上げ」や「印刷」機能など、細かい機能もいくつかあります。
誤りチェックの質はATOKクラウドチェッカーが上
ユーザー辞書等を何も設定せずにデフォルトで使った場合のチェックの質ですが、ATOKクラウドチェッカーの方が良いです。
文章の校正では「誤用」のチェックが重要になってきますが、文賢の「校閲支援」ではチェック出来ていない誤用も、ATOKクラウドチェッカーの「誤りだけチェック」ではチェック出来るものが多くあります。もちろんこの逆もたまに有るのですが、チェック出来る数は圧倒的にATOKクラウドチェッカーの方が多いです。
また文賢では、文脈に関係なく「~ではないですか?」という感じのチェックに留まり、完全に誤用をチェックしてくれるわけではありません。例えば、「保証」という文字があった場合に、文脈に関係なくいつも「保証」「補償」「保障」ではないかと候補が表示されます。それぞれの文字の意味も表示されるため、検討するには良いのですが、文脈上正しい使用かどうかは関係なくいつも表示されるため、誤用チェックと言うよりはあくまで「提案」レベルの機能となります。
一方ATOKクラウドチェッカーは、文賢のような複数の使用例がある場合の提案といった機能は無いですが、逆に文脈から判断して間違いであるところを表示してくれます。もちろんこちらも100%間違いだけを指示してくれると言うわけではありませんが、ATOKクラウドチェッカーのチェックはほぼほぼあっているため、質は高いと言えます。
表記のゆれチェックは役立つ
ATOKクラウドチェッカーの機能の1つ、「表記のゆれチェック」は、文賢にはない機能ですが、地味に役に立ちます。
例えば、あるところでは漢字表記の「一」と書いているのに、あるところでは「1」と書いていたり、また、あるところでは「カ月」と書いているのに、あるところでは「ヶ月」と書いているなど、このような不一致は記事を読んでいる人には意外に気になったりします。
一方で目視でこういった違いをチェックをするのは、文章が長くなれば長くなるほど手間のかかる作業です。これを一発でチェックしてくれる機能は、校正ツールとしては役に立つものです。
もちろん意図して使い分けている部分もあるため、そういった箇所もチェックされてしまいます。また、「言う」「言える」「いう」など、似たような表現であるものの、使い方が違う場合であっても、どれか1つに統一しようとするなど、最終的な目視が必要な部分はあります。
それでも、気になる表記のゆれを短時間でチェック出来る機能としては役に立つはずです。
ATOKは候補をそのまま使用可能、文賢はチェックしながら編集できる
2つのツールの違いは、機能面以外にも使用面でもあります。
これも地味な機能ですが、例えば「手がだしずらい」と書いた場合、正しくは「手が出しづらい」です。このような送り仮名の間違いがあった時、ATOKクラウドチェッカーは正しい候補を表示してくれて、その文字をクリックすることで、そのまま修正が出来ます。文賢ではあくまで候補を表示してくれるだけですので、修正する場合は自分で文章を再編集する必要があります。
このような校正の手間を省く部分でも、ATOKクラウドチェッカーのほうが使いやすいと言えます。
ただ一方で、ATOKクラウドチェッカーは、チェック中は手動での編集ができないため、候補通りに修正しないときには、1度チェック機能を外した上で該当箇所を探し出し修正しなければなりません。これは少々手間になります。逆に文賢は、文章のチェック機能を使いながら、文章を編集することが可能です。もし編集した場合は、リアルタイムで再度チェックが行なわれます。
つまり、文賢は文章を直しながら推敲ツールとして使うことが出来るのに対して、ATOKクラウドチェッカーは、あくまで完成した文章の最終確認用と認識した方が良いかもしれません。
自分で設定するなら文賢
前述したとおり、文賢は「ユーザー辞書」機能があり、自分の文章作成ルールを登録しておいてチェックすることが出来ます。また、複数人で校正を行なうときなどにも、ひらがな表記やカタカナ表記、漢字表記などのルールを登録しておけば、統一した規則で運用可能となります。
このように、細かい設定を自分で行ないたい場合は文賢の方が高機能と言えますし、これが文賢を使用する1つのメリットとも言えるでしょう。一方で、ATOKクラウドチェッカーには自分で登録できる辞書のような機能はありません。
自分で辞書など登録するのが手間だし、使わないという人には不要な機能ですが、必要な人であれば、文賢一択と言うことになります。
私は文献でチェックしてからATOKを使う
最初の結論でも述べた通り、どちらか1つを選ぶのであれば、「ATOKクラウドチェッカー」がおすすめです。ただ、私は結局文賢→ATOKクラウドチェッカーの順で使っています。
前述したとおり、文賢はチェックしながら編集ができます。文章の校正をする場合は、誤字脱字のチェックだけでなく、分かりづらい表現を直したり、主語や指示語を補う、長い文章を分けるなど、「読みやすくする」作業も必要となります。そのため、まずは文賢でチェックしながら、文章の細かい部分を直していきます。これはATOKクラウドチェッカーでは出来ない作業です。
そして編集が終わって完成した文章の最終確認のために、ATOKクラウドチェッカーを使います。この段階では、主に表記のゆれや、誤字脱字のチェックを行ないます。
このような使い方をしているため、私は両方のサービスを併用しています。
文賢とATOKクラウドチェッカーには、それぞれ一方でしかチェック出来ない項目もあり、また、それぞれのシステムが認識出来る間違いにも差異があります。
どちらか一方だけに絞るのではなく、両方を使うことで、より校正の質を上げるという選択肢もあり得るでしょう。
ペンギン探偵の考察
私が校正ツールを使い始めた理由は、「時短」でした。ただ、この目標が達成出来たかというと、少々微妙です。
校正ツールは、目視では難しかったり時間がかかる細かいチェックをするのには、役立ちます。ただ、逆に目視でそのようなチェックをしていなかった場合は、ツールを使う分だけ作業時間が増えるとも言えます。
結局時短が出来たかどうかは微妙だったのですが、ただ、文章の間違いが少なくなり、統一性がある文になったことは確かです。
校正ツールは使って見ると分かるメリットとデメリットがあるかも知れません。文賢はお試しも無く初期費用も必要なため、まずは校正ツールを試してみたいという場合は、より低価格で利用できるATOKクラウドチェッカーから始めても良いかもしれません。