謎の種が届く!?注文もしていない商品が届く理由 「ブラッシング詐欺」の手口とは?

謎の種が届く!?注文もしていない商品が届く理由 「ブラッシング詐欺」の手口とは?
怪しい荷物

最近、「謎の種」が届いた、というニュースが世界中で話題となっています。また少し前にも、注文もしていないギフトカードがアマゾンから届いた、というニュースもありました。

この原因の1つではないか、と言われているのが、「ブラッシング詐欺」という手法です。

最近届いている「謎の種」の正体が本当に「ブラッシング詐欺」かどうかの真偽はともかく、「中華系(中国)アマゾンセラー」が行っている、いわゆる「詐欺的手法」をよく知っている人たちからすれば、ああ、あのやり方だね、という方法があることも確かです。

その界隈の人にはよく知られた方法の1つですが、一般的にはほとんど知られていないと思いますので、今回はその手法を、注意喚起の意味も込めて紹介してみます。

※なお、私がここで紹介する方法に関しては、中華系セラーの知人から実際に聞いた情報ではありますが、あくまで情報として知っているだけのものですので、必ずしも正確ではない可能性があります。また現在では、より巧妙な手口が出てきている可能性もあるため、必ずしも現在も行われているとも限りません。

中華系セラーは売れるためなら何でもする

まず手法の話に入る前に、前提条件とも言える中華系セラーのマインドを紹介しておきます。少し長くなりますが、ここを全く知らないと、なぜ彼らがそんなことをするのかという理解が少し難しくなるのではないかと思いますので、前もって書いておきます。

最近、アマゾン(を始めとする物販プラットフォーム)では、いわゆる「中華系セラー」の商品があふれています。例えば、モバイルバッテリーとか、ちょっとした家電製品とかを探そうとすると、あまり見たこともないブランドの商品が(どれも似たものが多いですが)、並んでいることを見たことも多いのではないでしょうか。

そういった商品の多くは、中国人販売者が販売しているものです。この記事ではそういう商品を販売ししている販売者(セラー)を、「中華系セラー」と呼んでいます。

なお、当然のことですが、ここから書くことは「中華系セラー」の全てがそうだ、ということではありません。あくまでその様なセラーが多い傾向があり、彼らの巧妙な手口がたくさんあるということです。

またこれも当然のことながら、中華系セラーをまねする日本人セラーもいますので、必ずしも中国人だけが行っている手法、と言うわけでもありません。

ただ、私もそうですが、地道にアマゾンなどのプラットフォームで販売しようとしている者からすれば、購入者以上に彼らの手法には「迷惑」しており、早く「排除されて欲しい」と願っているのです。

それはともかく、中華系セラーのいわゆる「詐欺的手法」というのはいろいろあるのですが、彼らの手法というのは、「とにかく売れるためなら何でもする」ということが前提です。このあたりは、日本人と中国人の意識の違いがあるのではないかと、個人的には考えています。

例えば、使ってもいない商品に関して「偽レビュー」を書くことですが、中華系セラーはとにかく「売れればOK」なので、「嘘レビューを書けば買う人が困るだろう」や、「こんなことをすれば後ろめたさがある」などという意識は、そもそもないのです。

私も知人に中華セラーが複数いるのですが(先にも述べたように、今回紹介する手法も彼らから聞いたものですが)、その人たち「個人」は、いわゆる「良い人」がたくさんいます。ただ彼らは、ビジネスになるととにかく「売れる方法」であれば何でも方法を考えているのです。

アマゾンなどのプラットフォームで販売する場合、基本的には「規約」がありますので、それを守った上でいかに売れるかを考えるのが、普通の方法です。

一方で中華系セラーの場合、規約を破っても良いからとにかく売れる方法を考え、さらには、いかに規約を破っていることを運営者に見破られないようにするか、という方法も研究しているのです。それも悪意がある、と言うことではなく、売るためには行う「ごく当然のこと」として行っているのです。(なおもちろんですが、中国人が全てそうだとか、そういう決めつけをしているわけではありません。)

普通の感覚からすれば、何か悪いことやずるいことばかりを考えた商売をしている人たち、というイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、彼ら中華系セラーは「ごく普通の商売の方法」として、「偽レビュー」のような手法を行なっているのです。

とにかくここでは、その行動自体の違法性や迷惑さを論じることはしませんが、つまり、この行動は中国人がいかに「ビジネス的」マインドであるかを示しているのです。日本企業が競争しなければならない中国企業というのは、そういう前提の、つまりは日本人とは全く違う考えの基で運営されている可能性が高い、ということです。

頼んでもない商品が届く、ということも、そういうマインドで行われていると考えれば、少しはその動機が理解しやすくなるのではないかと思います。

ブラッシング詐欺の手法とは

私自身、「ブラッシング詐欺」というフレーズ自体は今回の「種」のニュースで初めて聞きました。そのため、この言葉自体が、これから説明する手法を指すのかは、正直なところはっきりとは分かりません。

ただ、これから紹介する方法は、いわゆる謎の商品が届く原因としては十分考えられるものです。(中華系セラーに迷惑している人たちであれば、ごく当然に知っていることかも知れませんが)

では順を追ってみていきます。なお、今回は「アマゾン」を例に「中華系セラー」が行っている手法として紹介していますので、その前提でお読みください。

a. 中華系セラーはたくさんのアカウントを持っている

ネットワーク

アマゾンの規約というのは、基本的には「販売用のアカウント」(セラーアカウント)は、1人1個しかもてません。方法によっては2個持てたりもするのですが、基本的には、個人・法人関係なく、1人1個が原則です。

ただ、中華系セラーというのは、1つの販売会社が何十個、何百個もアカウントを作ることは珍しくありません。

わかりやすく言えば、「1つのグループ」と考えれば良いでしょう。

方法はいくつもあるのですが、例えばとにかく「人が多い」ことを利用して、グループの中に50人がいるとすれば、それぞれの個人がアカウントを作って販売する、というイメージです。またアメリカなどでは法人が簡単に作れますので、何個も法人を作ってアカウントを作る、という方法もあります。もしくは、「有料で」アカウントを購入したり借りたりする手法もあります。

アマゾンで販売している人は、リスクヘッジのために複数のアカウントを持つことは、それなりにあるのですが、中華系セラーのそれは、恐らくそういったセラーの想像を超えたものです。とにかく、1つの中華系グループは普通で考えられるよりもかなり多くのアカウントを所有しているということです。

このことは、たとえ1つのアカウントが閉鎖されたとしても、彼らにとってはそこまで痛手ではない、ということでもあります。つまり、一時的に売れればそのアカウントがどうなっても問題ない、と言うことでもあるのです。

また大量のアカウントを保有することで、それだけ多くの「個人情報」を集めることも可能となり、それが今回の手法で悪用されてしまうのです。

b. 偽レビューで売上を上げる いたちごっこの戦い

偽レビュー

アマゾンで商品を販売する場合、よく売れるためには、いろいろな要素があります。その要素の1つが「商品レビュー」です。

このレビューは直接購入のきっかけにもなりますし、また、アマゾン内での検索の順位などにも影響します。ここでは本題ではないため、その詳しいし仕組みなどの説明は省きますが、とにかくレビューが多ければ売れやすい、ということです。

ただ一方で、商品レビューを集めることは簡単ではなく、時間もかかります。そこで出てきたのが、「偽レビュー」です。時間をかけずに一気に商品を売りたい中華系セラーは、とにかく偽物でもいいのでレビューを増やし、販売を拡大しようとしたのです。

そしてこれまで、この「偽レビュー」を排除しようとするアマゾンと、「偽レビュー」を投稿しようとする中華系セラーとの間には、いたちごっことも言える長い戦いの歴史がありました。

その戦いの結果、レビューに対する規制も強化されていきました。かつては購入していない商品にもレビューをかけたのですが、今では、基本的には商品が購入されれば、郵便局などの配送会社が発行する「追跡番号」を購入者に通知し、「配達情報が完了となった」ものにだけ、レビューが投稿できるような仕組みになっています。

ここが、注文もしていない商品が届く謎の最大の理由でもあります。中華系セラーはこの仕組みを突破するために、巧妙な方法を考えているのです。

c.「ブラッシング詐欺」の手法とは?

ではいよいよ、具体的な方法を見ていきます。なお、ここで説明するのはあくまで一例であり、必ずしもこのような方法で全てが行われている、と言うわけではないためその点はご了承ください。

まず、あるアマゾンでの商品販売者がいたとします。この販売者を仮に「偽物商社」という名前とします。この「偽物商社」は5つの販売用アカウントを持っているとします(実際にはもっと多く持っているはずですが)。そのアカウントを仮に「A」「B」「C」「D」「E」とします。

それぞれのアカウントを見ればどれも独立して運営されているようにみえ、一見しただけでは、おそらくその関連性は分かりません。

ただ、「偽物商社」には、ABCDEのアカウントで商品を購入した人たちの個人情報が集まるのです。

次に、「偽物商社」はFという新しいアカウントを作り、ここで新しい商品「偽物ウォッチ」を販売し始めたとします。「偽物ウォッチ」は当然にレビューもなく、売れ行きも良くありません。

そこで「偽物商社」は、まず商品を購入するための「購入用アカウント」を作ります。実はこの購入用アカウントというのは、1人で何個も作る方法があるのです。ここが今回の詐欺のポイントなのですが、アカウント自体は作れても、それに紐付ける「住所」が不足するのです。

先にも書いたように、商品レビューを記入するには、現在では、配送会社の追跡情報が「配達完了」となる必要があるのです。そのため、住所に関しては架空の情報も基本的には使えない仕組みになっています。

ここで偽物商社は、ABCDEのアカウントで購入した人たちの名前と住所を使うのです。もちろん、購入者に同意などは一切得ていません。アマゾンの規約にも違反しますし、法律的にも恐らくアウトでしょう。

(なお、ここでは「偽物商社」が自ら大量の購入用アカウントを作成している流れで説明していますが、偽レビューを投稿する専門の業者も多数存在するため、そういう業者に依頼をしていることも多いです。その場合は、業者が「偽物商社」と同様に購入者用に使用する個人情報を大量に保有していたりします。ただここでは流れを分かりやすく説明するため、業者経由の説明は省きます。)

つまり、Fで販売する「偽物ウォッチ」を、大量に作った購入用アカウントで購入します。その時に購入者の「氏名」と「住所」にABCDEで商品を購入したことがある人の情報を記入しているというわけです。

(なお、1つの購入用アカウントからでも、複数の注文番号があれば同様のことが可能な方法もあるとの情報もあるため、このあたりの方法は実際とは違う可能性もあります。)

そして実際には、「偽物ウォッチ」を送るのではなく、種やギフトカードを送るのです。これはなぜかと言えば、単純に種やギフトカードが安いことと、「偽物ウォッチ」そのものを送れば、届いた人にも、運営側(アマゾン)にも簡単に不正行為がばれてしまうと言うことがあります。

ですので、例えば、Aのセラーアカウントから以前に何か商品を購入したことがある人には、全然関係のない所(中国など)から、全然知らない「種」が届いたりするのです。この人自身は、Fというアカウントも、「偽物ウォッチ」という商品も知らなければ、Aというセラーアカウントで購入した情報が使われている、と言うことも分からないでしょう。

そのため、なぜこんな訳の分からない商品が勝手に届くのだ、と言うことで、問題なになるのです。

ただこれは、例えば種だから怪しまれて問題になりましたが、何か単価の安い、例えばギフトカードのようなものであれば、それほど不審に思われずにそのまま見逃されることも多いため、問題にならずにこれまで続けてこられたと言うこともあるでしょう。

「ブラッシング詐欺」を避けるためには

ここまで見た内容が、いわゆる注文していない商品がなぜ届くのかの謎の原因の1つです。もちろんこれ以外にも理由があるでしょうから、一概に全てがこのためとは言えませんが、ともかく、自分が全く知らないところで勝手に個人情報が使われてしまい、そのつながりも全然分からないまま、勝手に商品が届く、ということです。

では、これを避ける方法があるのでしょうか。

この方法は商品が届いた本人は全く分からないところでいろいろな行為が行われているため、巻き込まれてしまえば、避けることは難しいでしょう。

まずは不審な商品が届いたらとにかく開けない、と言うことが大切でしょう。

また、そもそも怪しい中華系セラーからは商品を購入しない、と言うことも重要です。もちろんちゃんとした中華系セラーもいるでしょうが、よっぽど知名度があるセラーでもない限りは、個人レベルで見抜くことはかなり難しいでしょう。

そのため、少なくとも発送元が中国となっている商品や、発送元がアマゾンとなっている商品であっても、販売者の住所が中国となっているような商品は、購入を控えた方が良いです(中華系セラーの多くは、アマゾンの倉庫を使ったFBAという方法を利用しています)。

その時は安く商品が買えるかも知れませんが、その販売者に渡った個人情報は、どこでどう使われるかは全くの闇の中と言えるでしょう。

終わりに

ここで見た手法は、あくまで1つの例です。

中華系セラーが行っている「詐欺的手法」というのは、他にも多数あり、また、プラットフォーム側が度々規制や対策を行っても、それに合わせてすり抜ける方法もどんどん考えられています。

一方で先にも書いたように、これを「ビジネスの手法の1つ」として、ごく当然に、何の悪意を抱くこともなく行っている人たちが世の中には存在するのだ、ということも、また事実なのです。

そういった闇の一端が、今回世の中のニュースとして現れたのだと思いますが、多くの人たちは、なぜこんなことが起こっているのか、結局は理解できないことでしょう。もちろん、私自身がここに書いたことも、あくまで憶測であり、間違っている可能性も大いにあります。

ただ、一部の人が思っているような、例えばバイオテロか、組織的な犯罪とか、そう言う大げさなものではなく、単純に中国人がビジネス手法の一環として行っている、ごくごく小さな出来事の1つが、世の中を騒がせている、と言うことが、実際にはたくさんあるのだとは思います。

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